インド、ロシア、ウクライナ、ルーマニア、フランス。11社と、パリの1人から入札

iPhoneアプリ開発の募集を載せてから、数日。あっという間に世界各地の11社とフリーランスの1人から応募があった。

こんな仕事人探しはは生まれて初めてだが、入札のメッセージや売り込みの仕方もいろいろなら、英語のレベルもバラバラ。定型の営業文をコピペしただけの会社があったと思えば、こちらのデザインをしっかり検討した上で意見まで述べて入札していたり、はっきりと差があっておもしろい。

どこも過去の製作事例を「Portfolio」として送ってきていたり、自社サイトで紹介したりしているので、1つずつチェックできる。わたしの場合は、コスト以外に、デザイン性の高いアプリの開発を経験しているかどうかが鍵。素人のビジネスマンと、本職デザイナーとでは画面の仕上がりに対するこだわりが雲泥の差だから、プロのデザイナーと仕事をしている実績があるかは気になる。

余談だが、実は、最初はこちらの予算を「500〜1,000ドル」、およそ5〜10万円で募集をかけた。1日経っても入札が2件しかなかったので、なにかおかしいと思って他の募集を見たところ、どれも2,000ドル以上だった。そこで、予算を「1000〜5000ドル」にして再掲載。すると11件の応募が来た。ただの一攫千金狙いのアホだと思われないように、アウトソースの相場は確認しよう。

下に書いた、入札会社の提示金額を見るとわかるが、インドが一番安く、東欧3国はその2倍くらいだ。聞くところによると「Skype」のメインの開発拠点はエストニアにあるらしく、東欧は物価だけの差でなく、開発マーケットとしても成熟しているのかもしれない。

さて、入札には「あくまでも仮」で見積もり金額を入れてくるところや、細かく見積もりをしたいので資料をくれというところがほとんどで、これは筋が通っている。

いずれにしても、実際にELanceのメッセージ交換機能やSkypeのテキストチャットなどで、コミュニケーションがプロ基準かを確認したり、細かい点については尋ねないといけない。文章の翻訳のような簡単な仕事だと、この最初の入札だけでプロジェクトを発注できるのかもしれないが、ソフト開発はそうはいかない。

さっそく、NDAにサインしてもらった上で、精密な見積もりを頼んだ。わたしの選んだ、上位3社をご紹介しよう。

(各社ともELance上のプロフィールにリンクしておいたので、作品や方針など、読んでみるとおもしろいだろう)

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Quintet Solutions (インド)

南インドの開発会社。募集告知を出してから一番最初に名乗りを上げたのはここで、連絡してきたのは、ここのソフトウェア部門の責任者で、超ハイパーで気の短くユーモアセンス抜群のお兄ちゃん。Skypeで延々とチャットしたところ、マーケティング活動はほとんどしておらず、評判を聞いて人づてというケースがほとんどらしい。ウェブ解析サービス「Woopra」と深い関係にあるとかないとか謎めいた発言。会社のクリスマスパーティーの写真まで見せられて、情熱的な連中が多そうなので情が移ってきたのだが、iPhone開発の経験が少し弱い。もう少し先に是非仕事をしてみたいと思わせる期待株。見積もり別途。

TechAhead Software (インド)

iPhoneやAndroidなどのモバイル端末のソフトを専門にしている開発会社。営業資料やウェブサイトにはかなりの金を使っており、やる気が感じられる。定価は$20/hourだが、長期的に仕事が可能なら$15で良いと言う。「1日に1回はうそをついても良い」という「北インド」を拠点にしているので、はたして・・・。ELance上での仕事歴も長く、利用したユーザーからのレビューも非常に良好。見積もり別途。

PopAppFactory(ルーマニア)

首都キエフをベースにしている、デザイン重視プロジェクトが得意な会社。たしかにデザイン性では群を抜くが、ベースチャージが$35/hourと、インドより遙かに高い。低予算の今回は見送りになるが、デザイナーやアートディレクターが社内にいるため、ポートフォリオが別格のクオリティーで、極めてそそる。全体のおおまかなデザインは私でもできるが、細かい部分は、開発者側でやってもらえるのが一番スムースなのである。安いインドの開発者との仕事は、何度も何度もデザインにだめ出しをして、ピクセル単位の修正を繰り返してもらう長い道のりになるだろう。今後のために見積もりをしてもらった。

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そのほかの入札者ぜんぶ

Roy M.(パリ在住のフリーランス開発者/デザイナー)

今回のメンツの中では、一番の異色は彼だろう。フランス人の男で、ウェブ開発からiPhone開発に転向して1年。まだ作品集が弱いので、ぜひ作りたいという。英語でいうところの将来の売り込みに使える「portfolio piece」になることに目をつけたあたりよくわかっているようなので、いろいろ連絡を交わした。そういった理由から、2000ドルで良いと言ってくれているが、パリの相場ではこれは激安。発売後の改良やバグ取りなど、最初だけ安くしてもらってもだめだし、個人では完成まで時間もかかるだろう。

Citytech Software (インド)

窓口になっている男の英語力に、多少難あり。過去の製作事例には、デザイン性の高いものは無い。2500ドル。

EcmaSoft(ロシア)

極めて短い定型メッセージでの入札だが、実力はありそう。大手。コミュニケーションの手法が、冷静沈着なロシア人そのものなので、勝手な妄想だが、ちょっとこわい(笑)見積もり別途。

Newrosoft(ルーマニア)

設立10年という、他社よりも経験の長い開発会社。テーマは違うが、仕組みは似ているソフトを開発しているところだという。東欧系はやはりコストが高い。最初の入札で概算4,000ドルを提示。

OOOPPSSSTECH(インド)

プロジェクト数は多いが、事例は普通、連絡していた文章も定型。2048ドルの提示。

iPhone Apps Development Company India(インド)

なんともストレートな会社名だが、ちゃんとこちらの仕様を読んだ上で連絡してきていて、どこか難しいかの分析付き。作品は普通。$2,739。

NIX Solutions(ウクライナ)

ELanceにおけるプロジェクト数が224件で、公開されているプロジェクト総額だけでも1.5億円という、大手ベテラン開発会社。腕はありそうだが、連絡は定型で、作品も普通。別途見積もり。

MobilePundits(インド)

モバイル開発が得意そうではあるが、定型な連絡メッセージ、作品は普通。3500ドル。

Cratima Software(ルーマニア)

定型なアプローチだが、プロフェッショナルな内容に好感。見積もり別途。

投稿者:

阿部譲之

主にデザイナー業。マレーシア・ペナン島在住。中学校の美術教科書に作品掲載。グッドデザイン賞受賞。十四代目伝統木工の家に生まれ日米修行→NYの美大で工業デザイン専攻しながら石岡瑛子氏のお手伝い→フリーランス七転八倒→ちょっと新生銀行勤務→ちょっと花屋→ 阿部書店(株)を設立して主にデザイン業→ 双子が産まれる → ペナン島にお引っ越し。その昔、日本のデザイン誌を中心に寄稿。ツイッター @yoshiabe