ペナン島から日本の書店の販促物をデザイン。Discover 21刊「基本は誰も教えてくれない日本人のための世界のビジネスルール」

ベストセラーを連発する編集オネーさん・石塚理恵子さんと銀座で飲みました。年末年始に日本に戻っているときのこと。最近よくあるパターンですが、ツイッターで知り合いました。

そのときに、いつかお仕事しましょうよぉと話していたら、早速ご依頼いただきました。

お手伝いしたのは、青木恵子さん著「基本は誰も教えてくれない日本人のための世界のビジネスルール」の書店販促物です。ディスカヴァー21刊。さっそく重版がかかったそうで、よく売れているとの速報。

NYに住んでいた私でもビビるネタ満載ですので、そりゃ売れるでしょう。

デザインを作るにあたり、ゲラに眼を通しましたが、浮世離れしたニューヨークの天上界を知る人が書いているので、ぶっとんだ本かと思っていたのですが、非常に硬派な語り口と内容が好印象でした。NYのレストラン界で知る人ぞ知る、故ロッキー青木さんの奥様が著者です。

ところで、日本の書店で使われる看板やPOPを、はるかかなたのペナン島でデザインしているとは、ご来店の皆さん、夢にも思わないでしょうね。うっしっし。

本屋の店内は、たくさんの文字や写真・色が溢れかえっているので、凝ったデザインは逆に目に留まらないのだそうで、単体ではシンプルすぎるように見える仕上がりに。たくさんのバリエーションを作った中から選んだ案を、何度も東京とやりとりして磨いています。

冒頭の画像は、つくったもののひとつで、実際に書店でつかわれている看板です。

どのくらいの距離から見られるものなのかによって文字のサイズや要素の数を決めたり、隣に並べられる商品本体との兼ね合いも考える必要があります。ペナンで作ったデータを、東京の最高裁判所の裏手にあるディスカヴァーさんにメールで送り、Skypeで話しながらその場でプリントアウトしてサイズ感をチェックしてもらったりしていると、物質伝送でも発明されたような感覚。

頂いた表紙・帯データと、指示原稿に、わたしなりのキャッチコピーを加え、チェックリスト風にして、お客様につかのま足をとめて頂くデザインにしました。

私は、かっこいいだけのデザインをつくることに興味を失ってきているので、本屋というたくさんの物が溢れかえる場所で、目を引き、何かを伝えるデザインを作るというおもしろい案件でした。

・・・が、とにかく、スピードが速い!

ペナン島でのんびり生活していて、ネット経由で日本のメジャー出版社さんの仕事をすると、ペースの違いを実感します。刺激的なお仕事でした。

アマゾンジャパンの「Kindleストア」で、この国の本は激的に安くなる

いまにも出るぞ!出るぞ!と言われ続け、いつまでたっても始まらなかった、Amazonジャパンの電子書籍販売サービス「Kindleストア」が、本日 2012年10月25日、ついにスタートしました。

さっそく、覗きに行ってみたら、電子版書籍の値段を見てビックリ。

うぉっ、どれも紙版より安いじゃないの!!

日本のKindleストアの価格設定を見ると、例えば、紙版が定価714円の漫画「テルマエロマエ 第1巻」がKindle版だと215円(70オフ!)。最近ベストセラーになっているビジネス書「ワークシフト」は、定価2,100円が1,500円と30%オフになっています。

アメリカの書店だとベストセラーコーナーに並ぶ本は、だいたい数割引で売っています。日本で新刊本が値引きされるというのは、わたしにはやっと同じようになったかという気分です。

日本の新刊書籍や雑誌は、独禁法で「値引きが禁止」されてきました。この国では、大手出版社がアクセルとブレーキを同時に踏み続けたせいで、電子書籍がぜんぜん普及していないですから、事実上、日本のすべて新刊本は、定価で売られるもの、というのが相場です。

昨日までは。

消費者として激しく頭にくるそういう状況も、おしまいとなる可能性がでかいと思われます。

法律により製造者が決めた「定価」で売らなければならない商品という、消費者としては意味不明ものが、今も存在します。日本の公正取引委員会が名指ししている商品たちで、新品の書籍、雑誌、新聞、音楽ソフトなどの著作物商品がこれにあたる。なぜかDVDなどは入っていません。1997年までは化粧品や医薬品も含まれていました。本は、最後までしぶとく残っている指定商品の一つということになります。

そうすると、電子書籍も「定価で売らなければならない」という制限にひっかかりそうなものですが、調べてみると、制限のあるのは「物」の商品に限るのだそうです。

つまり、電子書籍は、アマゾンのような小売り業者が、好きなように値段を付けられるというわけ。今後、なしくずし的に、紙の本は定価でないと売れないという制限も崩れていくかもしれません。そりゃ人間、機能がほとんど同じなら安い方を買いますからね。

そんなうちの一人であるわたしは、ここ数年、アメリカのアマゾンからKindle電子版の洋書をたくさん買ってきました。

いつでもどこへでも持ち歩ける便利さや、欲しいときに瞬時に手に入ることじゃありません。そんな程度のことでは、私の買う和書・洋書トータルのうち、3/4までもがKindle版になったりはしません。

決定的だったのは、「明らかに安い」ということ。

注目していただきたいのは、「安い」ではなく「明らかに安い」という点です。紙版とKindle版のどちらを買おうか迷う余地がないほど安いものが多い。やはり本は紙で読みたいというような理屈は、値段が同じならという前提があるわけで、値段が半額となると信念もグラグラになる。

米AmazonのKindle本は、一部の売れ筋の本だと、紙版と比べて半額で売っているものすらある。多くの本も、少なくとも数百円程度は安い。くわえて、米アマゾンから買うと、日本までの数千円の送料もかかってしまいます。

いまでは、読みたい洋書があると、なにはともあれ、まずはKindle版があるかどうかをチェックのが習慣になりました。

金の沙汰と、そしてポルノは、人の波が流れる方向を変える巨大なモチベーションになる。新しいテクノロジーが普及する大きな要素です。

最近では、東京の本屋に立ち寄って本を手に取ったときも、原著が英語の場合は、ポケットからiPhoneをひっぱりだし、アメリカのKindle版だといくらかをチェックしてから、安い方をその場で購入するようにしています。紙の本ならそのままレジへ、Kindle版ならその場でiPhoneから購入手続きするか、試し読みサンプルをダウンロードします。

この経費削減ワザは、日本語と英語がどっちもサクサク読める人にしか使えなかったテクニックでしたが、それも、今日から少しづつ変わっていくでしょう。日本の本もKindleの方が安いとなると、和書にも通用するようになる。

日本のKindleストアは、和書5万冊からスタートだそうですが、売れるとなれば多くの出版社がKindle版を投入するでしょう。ぜひとも、そうなって欲しいところです。