愛用しているのは、真っ白なコピー用紙と、パイロットのジェルボールペン。次々に出てくるアイデアを超高速で書き留めるには、このコンビが無敵だ。
iPhoneアプリでも、ウェブサイトでも、そして、グッドデザイン賞を頂いたパッケージでも、はじまりの始まりは黒ペンと白い紙から生まれる。頭の中にしか存在しないデザインが、初めて目に見える形になるこの瞬間が「アイデア・スケッチ」だ。
今回は、その一部をちょっとお見せします。
アイデア・スケッチは、プレゼン用のキレイなお絵描きではなく、アイデアを整理するためにする自分のための作業である。頭の中でモヤモヤしている良さげなものが、本当に名案なのかは、目に見える形にしないと判断することはできないので、とりあえず絵と字にしてみるわけだ。だから、この過程で次から次へと出てくるゴミアイデアや、デザインのバリーション、思いついては消えて行くはかない無数の可能性も、超高速で書き留める必要がある。
これはニューヨークで石岡瑛子さんのお手伝いをしていたときに知ったことだが、名案というものは、名案だけを作ろうとしても生まれるものではない。一緒に出てきた他の案が、やっぱりダメだと確認する作業をしないと、プロジェクトが終わるまで気になってしょうがなくなる。だから、このスケッチ段階では、可能性をすべて洗い出すということに集中する。
なぜ、ペンと紙かと言えば、ネタを思いつくスピードに道具がついていけないからだ。iPadやパソコンでもスケッチはできるが、この段階では「遅い」道具なので使えない。そういう清書ツールは、アイデアが少し固まってきたときに初めて使うことになる。ノートではなく、比較的大きいA4サイズの紙にスケッチをするのは、描いた絵に次々に書き足していくとき、スペースが無くなって思考の拡がりがそこで終わらないようにするため。ノートだと、壁に貼れないし、スキャナーにも通しにくいのからA4の紙に落ち着いた。
さて、数日前にインドでプログラミングが始まった「寿命を視覚化するアプリ」のアイデアは非常にシンプルで、自分と家族や知人の残りの人生の長さを「比較」し、残り時間が少ない自分の親など気になる人の情報を詳しく「理解」、そして「行動」に繋げるという3つのステージで構成される。下に載せたのは、その流れを様々に検討した思考の跡の一部。
人に見せるつもりで描いていない上に、猛スピードなので、実は、何を書いてあるのか半分くらい私でも読めない。・・・なので、まだ発売前のデザインですが、別に載せてもかまわないかと思い。
このラフなスケッチが、少しずつiPhoneアプリに姿を変えていく様子は、ここでご紹介していくことにします。