赤道直下のバリ島・ウブドゥ町で見てしまった、日本式サービスの驚異

自分の前に誰がかぶっていたとも知れない、ほのかに汗臭いヘルメットをかぶり、ウブドゥの中心部を目指していた。10年ぶりに乗ったバイクで走る、穴ぼこだらけの真っ暗な夜道。しかもレンタルしたスクーターの2人乗りである。

「石鹸」を買いに行って死んじまったらネタとしては笑えるかもしれない・・・暑さではなく、その妄想にいやな汗をかきながら、地元のバイカー達を見習って一方通行を逆走。後ろに乗っている相棒が知り合いに強く勧められたという店に、言われるがままに向かった。

芸術の街として知られる「ウブドゥ」の真ん中へん、サッカーグランドのそばに、この小さなオーガニック石鹸の店「KOU」はある。西洋人の旅行バイブル「ロンリープラネット」にも紹介されている、知る人ぞ知る店だ。

長くなりそうな買い物を待つ間、わたしは外から店を観察することにしたのだが、どうもこの店、となりの土産物屋とオーラが違う。

シミひとつない木の看板とガラス窓。チリ一つ落ちていない床。袋からカードまで統一されたデザイン。店員と客の交える会話の適度な距離感。そして、頼むと無料でもらえるいくつでももらえる小袋とパンフレット。

ここは赤道直下・バリ島ウブドゥ町である。東京では当たり前のこれらすべて、この地では、一泊800ドルの高級リゾートでもなければ、金を積んでもありつけないサービスなのだ。

どうも、オーナーが日本人らしい。

日本式の洒落た店を、そっくりそのまま異国の地に持ってきただけで、こんなにも強烈な異彩が放たれるのだという好例。素直に、びっくりした。

海という壁に隔離された「日本」という大きな箱の中で当たり前のように行われている、驚異的レベルのビジネスの営み。

こんな場所に来て、頭の奥のほうで理解してしまった。

投稿者:

阿部譲之

主にデザイナー業。マレーシア・ペナン島在住。中学校の美術教科書に作品掲載。グッドデザイン賞受賞。十四代目伝統木工の家に生まれ日米修行→NYの美大で工業デザイン専攻しながら石岡瑛子氏のお手伝い→フリーランス七転八倒→ちょっと新生銀行勤務→ちょっと花屋→ 阿部書店(株)を設立して主にデザイン業→ 双子が産まれる → ペナン島にお引っ越し。その昔、日本のデザイン誌を中心に寄稿。ツイッター @yoshiabe