株式会社設立は、つくるときも、そしてその後も、めんどくさいことだらけ!・・・というイメージを持っている個人営業のプロは多いでしょう。
私もその一人でして、長年、株式会社にしよう思っていながら、ずっと個人事業主として活動をしてきました。
ところが、この冬に橘玲さんの「貧乏はお金持ち」という本を読んで、会社設立に対するイメージが180度変わってしまった。そのときの私の興奮ぶりは、読み進めながらツイッターでマシンガンのようにつぶやくのを目撃した人はご存知でしょう。
そのびっくりな全貌は、詳しく書く機会が来るかと思いますが、この本で学んだことの一つは、会社をつくるという最初のハードルがものすごく低くなったということ。
日本政府が景気回復の一環で、起業を大々的に推進していて、規制緩和や法改正をしたのが、その理由です。
設立にかかる費用が3.5万円安くなった
会社のルールブックとなる「定款」を公証役場で認証してもらうとき、認証料5万円に加えて「4万円の印紙税」が必要でしたが、政府が推進する電子認証を使うと、これが「無料」になります。
自分で電子認証をやろうとすると、手間と機材導入費用がかかるので、行政書士に頼むのが現実的ですが、ネットだと5,000円程度で引き受けてくれるところが多数あります。
単純計算すると、株式会社の登記が「3万5,000円安く」なり、総額20万円ちょっとになりました。
行政書士に4万円で会社設立を依頼して、自分で手続きをした場合にかかるコストと相殺するという手もあるようです。
たった1人で設立できる
いままでは、代表者の他に、少なくとももう1人の取締役が必要でしたが、いまは「代表取締役1名だけでOK」になりました。
個人事業の自営プロも、第三者を巻き込まずにそのままの体制で法人に移行できます。
役員の任期もいままでは2年だったのが、最大10年に延長になり、わずらわしい書類手続きも減りました。
資本金が「ゼロ円」でも良くなった
これはご存じの方も多いと思いますが、昔は株式会社を設立するには「1,000万円」の資本金が必要でした。いまは、ゼロ円でも可能です。
ただし、現実的には、設立後に現金が少し無いと支障が出ます。自治体の創業融資などを利用する場合にも、資本金×数倍が限度額になるので、ペーパーカンパニーでもない限りは、ある程度は必要だそうです。
資本金は現金である必要はなく、「物」でもOK。
「物による出資」が簡単になった
資本金を物で出す場合は、「現物出資」と言って、個人事業として使っているパソコンやカメラ、オフィス家具などを「中古時価」で出資可能です。私の場合、製作機材や家具の多くを現物出資にして、合計70万円ほどを資本金の額として追加します。
この現「物」による出資総額と、現「金」での出資の合計が、会社の資本金ということになります。
おどろくべきことに、自社のホームページや、知的所有権(著作物や開発したソフト、特許権など)も、現物出資の対象です。つまりお金儲けのタネになる権利は、新会社に出資するという形で譲渡でき、妥当な事業価値が計算できるものなら、現物出資が可能。
私のケースでは、昨年開発したiPhoneアプリ(外注実費20万円、自分の人件費数ヶ月で製作)を、29万円の価値がある資産として、資本金に追加しました。(29万円という半端な数字なわけは、現在の資産一括償却の上限が30万円未満のため)
新会社法の現物出資では、500万円以下なら、取締役(=ひとり起業なら自分)が書く調査報告書だけ添えれば済みますので、第三者の資産価値評価は不要です。
また、現物出資した品々の総額は、そのまま経費として計上できるため、初年度の利益も圧縮することができます。相場以上の金額をつけて現物出資をすると、あとで税務署に怒られて課税されるそうですので、ご注意を。
書類作成から定款の電子認証まで代行してくれるネットサービスあり
私の場合、さいきん雑誌の起業特集でよく紹介される「会社設立ひとりできるもん」という設立書類の作成サービスを使います。
解説に従ってネットで情報を入力すると、プロがチェックした上で登記に必要な書類をすべて作成してくれて、たったの7,350円。+5,000円で、出来上がった定款はそのまま行政書士さんが電子認証してくれるので、前述のコスト節約にもなります。
自分でぜんぶ手続きをするよりも、プロに頼んだ方が安いという怪・・・。ただでさえビジネスの立ち上げで時間が惜しいときですから、頼まない手はありません。しかも最短1日で書類完成!
資本金の払い込みは通帳コピーでOK
資本金の払い込みには、設立登記の前に銀行にいったん預けて出資金払込証明書というものを出してもらう必要がありましたが、現在は、代表者の口座に振り込んで通帳をコピーするだけで良くなりました。法人設立の障害のひとつだった要素だそうです。
「同じ住所」に同名/同業の会社がなければ登記可能に
今までは、同一の市区町村内に同名称/同業種の会社があると登記できない規制があり、事前に調査をする必要がありましたが、これが撤廃され、「同住所(つまり建物)内」で重複しなければ登記可能に。意図的に大企業と同じ名前の会社と作ると法に触れるそうですが…。
「事業の目的」の記載は緩くてOK
前述の類似商標規制が撤廃され、業種がかぶる可能性が低くなったため、定款に記載する「事業の目的」は、広い意味の定義でよくなりました。いままでは、かなり具体的に書かないと審査ではじかれたそうですが、いまは「飲食業」や「不動産業」というようなものでも通るそうです。
ただし、取引先が登記情報をチェックする可能性がある場合は、ある程度具体的に書いた方が良いという情報も。
登記住所は郵便物が届けばどこでも可
登記住所は基本的に「郵便が届けばどこでもOK」なのだそうです。
部屋番号などを記載しないで登記しても、郵便局に届け出をしておけば配達してくれるそうです。登記可のシェアオフィスや、私書箱の住所でも構いません。マンションでも、具体的に登記を禁止していない限りは、別にうるさいことは言われないケースがほとんどだそうです(看板も出さないし、人も出入りしない極小会社の場合)
さて、会社を作った後のあれこれについても、以前より条件が良くなったことはいろいろあります。中小企業向けの減税措置や、会計・決算のことなどなどなど。
詳しく勉強&経験してから、また書かせて頂くことにします。