モノ作りで避けて通れない『試作』という名の磨き上げ地獄。

天才的なデザイナーは、頭の中からすごいアイデアをひっぱり出し、百発百中で完成形を創り出すと思っている方は多いですね。はたから見ると、そんな、神がかった仕事をする人がいるように見える。

真偽はいかようなものかというと・・・。

天才的な人でも、その舞台裏では、一発OKになる案がでることなどめったにありません。

なぜかというと、何か新しいものを生み出す仕事のプロセスというのは、完璧とは言いがたいボロボロの原石を、すこしずつ、そしてまたすこしずつ、磨きあげていく作業だからです。

わたしが、過去にお仕事を手伝う機会のあったすごいおじさんおばさん達でさえそうなので、自分のような凡人に、そんな一発芸ができるはずもなく。

・・・ということで、延々と続く商品開発地獄の道のりを、また一歩踏み出してしまった、阿部でございます。

Airgift-web2

今回の冒険は、その名も「エアギフト」。

中途半端な贈り物を貰ってもうれしかない昨今、おさいふも軽いし、じゃあ、心遣いだけつたわりゃいいじゃねえの!、というコンセプトのサービスです。

数年前に一輪の花を郵便でおくるという、いかれたサービスでグッドデザイン賞を頂きましたが、今回は、ポストにあめ玉1つが届くというサービスをやることにしました。自分で書いてて軽く呆れますが・・・。

その前回のものも、最終形になるまでおそらく100バリエーションくらい作り、実際に販売したデザインも3回ほど全面改定しました。

今回のエアギフトは、先週末に試作品のモニター利用者を募集しはじめたデザインが15バージョン目くらい。みなさんにお見せするものとしてはバージョン1となります。

グッドデザイン賞の一次審査にはこのデザインで提出しましたが、お送り頂くご意見を短時間で反映して、7月中旬の最終審査の提出締め切りに間に合わせる無茶な進行です。おそらく、この形から一回は大幅に改造を行います。

デザイン屋さんが、いかに確信をもっていても、自分以外のみなさんに、試験的に使って頂くというプロセスは必須です。価値感や生活習慣が違う方が、はじめてこのデザインを見たり使ったときに、何が起きるかは経験上、ほぼ毎回、予測不能。

長い時間つきあっているものに対しては、眼がバカになります。客観的な「はじめて」の眼で見られなくなってくるためです。デザインに限ったことではありませんが(意味深)。

ということで、来週くらいまで無料モニターを募集していますので、チャレンジャーなあなた様の率直な批評をお待ちしております。改良の過程は、このブログにぽつぽつ掲載していきます。

投稿者:

阿部譲之

主にデザイナー業。マレーシア・ペナン島在住。中学校の美術教科書に作品掲載。グッドデザイン賞受賞。十四代目伝統木工の家に生まれ日米修行→NYの美大で工業デザイン専攻しながら石岡瑛子氏のお手伝い→フリーランス七転八倒→ちょっと新生銀行勤務→ちょっと花屋→ 阿部書店(株)を設立して主にデザイン業→ 双子が産まれる → ペナン島にお引っ越し。その昔、日本のデザイン誌を中心に寄稿。ツイッター @yoshiabe