温泉旅行の写真が仕事で採用。プロの基本「量と質」の関係とは?

写真はプライベートだけで、年間5,000枚くらい撮るのですが、たま〜に、それをデザインの仕事で使うことになることがあります。

熱海の海沿いに建つ、日帰り温泉から撮ったこの1枚も、そんなうちの1つ。

知り合いの小さな会社のウェブサイトを作る仕事をやってまして、会社のイメージが「海」。載せる写真の候補として、おまけで私の撮った写真も送ったら、私のやつが採用になりました。こういうことがあると、じんわり嬉しいものです。

オーナーさんがヨットに乗る人で、海は海でも、「黒潮」の海の写真がイメージに近かったとのこと。色が違うのだとか。

わたしは1回カメラを構えると、最低数回シャッターを切ります。構図を少し変えたり、自分が立つ位置を変えたりなどなど、あまり深く考えずにとにかく少しずつ違うだけのカットを撮る。特に人を撮るときは、表情が刻一刻と変化していますので、さらに多めに。

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このときは9枚撮影。いらないものが映り込まないように苦労したことがわかります。このうち1枚を色補正しました。

デザインの巨匠チャールス・イームスが語った「わたしのデザインの『秘密』」を思い出します。まず100のアイデアを出す。その中からベスト10を選び、それぞれ100個のバリエーションをつくる。納得がいくまでひたすら繰り返せば、勝手に良いものが完成するということ。つまり、秘訣なんかなくて、量の努力に過ぎない、というニュアンスの話。

プロはたくさん作り出した中から、ベストな1つだけを選んで世に出しています。一般の方は、完成形しか眼にしないので、アート系の仕事をする人は1発で傑作を作り出していると思っているようですが、裏側は結構地道な作業。

写真ひとつにしても、日常的にたくさん撮っているから、失敗もしまくって、打率が上がっていきます。これもまた努力あるのみ。

プロは量が勝負。量がともわない品質は存在しない!

・・・と書いといてなんですが、わたしも、まだまだ量が足りませぬ。精進しまふ。

投稿者:

阿部譲之

主にデザイナー業。マレーシア・ペナン島在住。中学校の美術教科書に作品掲載。グッドデザイン賞受賞。十四代目伝統木工の家に生まれ日米修行→NYの美大で工業デザイン専攻しながら石岡瑛子氏のお手伝い→フリーランス七転八倒→ちょっと新生銀行勤務→ちょっと花屋→ 阿部書店(株)を設立して主にデザイン業→ 双子が産まれる → ペナン島にお引っ越し。その昔、日本のデザイン誌を中心に寄稿。ツイッター @yoshiabe